クリニックの経営者の方の中には、「派遣」と聞いただけで、怪訝な顔をされる方もいます。おそらく偏ったイメージを持たれているからだと思いますが、利用するしないに関わらず、派遣制度への正しい理解はしておいたほうがよいと思いますので、できるだけわかりやすくご説明いたします。
人材紹介(直接雇用)と派遣の違い
一番の違いはというと、「労働者の所属が、自社になるか派遣会社になるか」ということです。人材紹介の場合は、直接雇用という形になり、労働者は自社(介護施設など)の所属となります。派遣の場合は、労働者は派遣会社の所属となり、派遣会社の就業規則にのっとって管理されます。「それくらいわかってるよ」という声が聞こえてきそうですが、改めて言いたくなるほど、この違いが重要なのです。
人材紹介(直接雇用)の場合は、自社の既存の就業規則にて雇用することになります。つまり、既存の賃金形態です。今の賃金形態が、周りの同業者と比べて十分引けを取らないのなら直接雇用を推奨しますが、そうでない場合は派遣が有効です。
派遣会社は、とにかく人材を集める必要があるので、通常は直接雇用の相場よりも高い賃金を設定して募集をかけます。賃金が高い分だけ、必然的に人材が集まりやすくなります。メリットはそれだけではなく、各種社会保険や、有給休暇などの福利厚生費用は派遣会社が負担します。また、ボーナスや退職金も支払う必要がなく、直接雇用よりも人件費を安くおさえることができます。
例えば、午前の三時間だけ週三回来てほしいというような場合は、派遣との相性が非常によいといえます。直接雇用と派遣の使い分けが大事で、要所要所でうまく利用すると、派遣はとてもお得な制度なのです。
紹介予定派遣を使いこなす!
医療関係者(看護師や歯科衛生士)は、派遣法において、派遣での勤務はできないことになっています。しかし、紹介予定派遣であれば可能となります。紹介予定派遣とは、派遣期間の後に派遣先の企業と直接雇用を結ぶことを前提にした派遣のことです。
これは派遣期間を試用期間と考えて、企業はこの試用期間を通して紹介予定派遣の派遣社員を直接雇用するかどうかを判断します。
もちろん試用期間ですので、派遣期間時に企業側から直接雇用を断ることもできますし、逆に派遣社員の方がこの企業とは合わないと感じれば、その誘いを断ることもできます。
紹介予定派遣は、国が推奨する制度でもあります。そのため、キャリアアップ助成金の派遣型という助成金がもらえる制度もあります。助成金を活用することで経費の負担も軽くすることができますし、雇ったけど何か違うというようなミスマッチを減らすことができます。
医療関係者の場合は、最大6か月間の派遣が可能です。1か月ごとの派遣期間としておき、延長を何回かしたのちに正社員という方法も可能です。しかしながら最大6か月間の派遣期間となりますのでご注意ください。
広告費も派遣・紹介会社持ち
「派遣は高くつくんじゃないの?」とよく言われるのですが、そんなことはありません。例えば、どんな媒体に出すにしても必要になってくる、求人広告費がかかりません。求人広告を出したのに、応募者が来なくて広告費が無駄になった、ということもなくなります。
また、直接雇用の場合は、仕事を覚えるまで研修や教育に時間も費用もかかりますが、派遣の場合は即戦力です。人員不足で、広告費や教育費ばかりがかさんでいるような状態なら、直接雇用よりも派遣を試されてみることを強くおすすめします。
皆様もぜひ一度、採用コストを実際に比べてみてほしいのです。事例として、「年収400万円クラスのスタッフ」の場合で比較しましたので、下図をご覧ください。