「非正規労働者の労働意欲や能力を向上させること、企業が採用リスクを最低限にしながら優秀な人材を育成・確保していくこと」を目的とした、厚生労働省の助成金があります。それが、「キャリアアップ助成金」です。せっかくの制度なのに、採用時にこれを利用しているクリニックはまだまだ少ないというのが、実感です。
採用に関するコストが上がり続けている今だからこそ、こういった助成金を利用し、さらなる採用力アップにつなげていくことをおすすめします。
助成金があまり利用されていない理由
なぜ、この「キャリアアップ助成金」があまり利用されていないのか。それは、「知らない」 「面倒である」という二つの理由が考えられます。
「知らない」について
知らないというクリニックの場合、ほとんどが「労務管理は社労士にまかせているからわからない」というパターンです。助成金を得意としていて、積極的に案内してくれる社労士は、全体のわずか1割程度というデータもあります。助成金の制度はコロコロ変わるので、絶えず知識のアップデートが必要だということも関係しているでしょう。だからこそ、社労士まかせにせず、自分でも調べておく必要があります。
「面倒である」について
面倒だからというのも、よく聞きます。しかし、なぜ面倒なのでしょうか。これは「知らない」にもつながる話ではありますが、助成金が得意な社労士であれば、その社労士の指示に従い印鑑を押すだけなので、面倒ということはないはずです。面倒だと決めつけていませんか? 面倒だと思うのはなぜかまで、考えてみましょう。
助成金を元手に、ライバル医院の一歩先を行く
「キャリアアップ助成金」は、必要条件を満たせば、事業主は労働者の正規雇用時に57万円(2020年2月現在)を受け取ることができます。さらに、派遣スタッフを直接雇用に変えることで、85万5000円を受け取れることになっています。これは、利用しないと損です!
この助成金は、条件さえ満たせば必ず受け取ることができます。紹介予定派遣(※)の紹介料に充てることもできますし、入社祝い金制度として、労働者本人にいくらか渡すこともできます。
助成金をうまく活用すれば、ライバル医院に勝つことができると思います。広告代・派遣代・紹介料などをケチればケチるほど、広告・派遣・紹介業者は逃げていくものです。そうなると、良い情報は入ってこなくなり、採用活動は手詰まりになっていきます。もちろん、採用コストの無駄を削ることは大事なことですが、このような助成金で予算を獲得し、採用活動にお金をかけることも一つのテクニックではないでしょうか。
面倒がらずにぜひ、助成金の有効活用も、戦略として取り入れてみてください。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金を混同してしまう方が多いのですが明確に違いますので覚えておいて損はないと思います。
助成金支給の流れ
助成金は主に厚生労働省の管轄であり雇用に関するものが基本的に多くなっています。財源は「保険料」となっています。給付は「実施計画申請→実施→支給申請→給付」といった流れが多くなっています。また、その計画通りに計画を実施し助成金の支給申請をして要件通りであれば確実に助成金を得ることができます。(社会保険労務士の独占業務となります)
補助金支給の流れ
補助金は、主に経済産業省や地方自治体の管轄であり予算は税金です。基本的には年数回程度の公募制で給付は「公募→申請書類提出→審査→採択→事業実施→支給申請→給付」といった流れとなります。補助金は公募から始まり、書類審査が行われ合否の判定が出ます。
採択決定となると採択通知が郵送され申請書類通りの事業を実施。それから支給の申請をして要件に合っていれば補助金が支給されます。計画申請が採択されないと補助金をもらうことができない上、使った金額の1/2補助といったパターンが多いのが特徴です。
医院で利用しやすいものとしてはIT導入補助金が毎年公募しています。WEB制作やグループウェア、予約システムの構築などにぜひ利用してみてはどうでしょうか。